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ネトゲ戦記 第三部「対谷直史さん損害賠償請求事件⑧」

お互いに「控訴理由書」を出したら、今度はそれに対する「控訴答弁書」を同日で提出する。これは相手の控訴理由書についての反論や争点を指摘する、地裁における第一準備書面のようなものだ。

 

まず彼のから見ていくと、谷直史さんの理由書に対するツッコミをしていくわけだが、面白い指摘がある。谷直史さんは、彼が提出した録音について、地裁では「録音されていることを知っていたから、きちんと『合法的な範囲で』と述べたのである。と主張していたのが「秘密録音は卑怯」に変わっていた

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まあ、多分、弁護士も何人も入れ替わってるし、本人も弁護士も過去の主張全てを把握しているわけではなかったのだろう。しかし、「録音されていたのをわかっててあえて言った」くらいの主張については覚えておいてほしいものだ。

 

「取締役を自分から辞任したから、新株発行目的が追い出しであることはありえない」については、「株主と取締役は違う」とレスしてるのだが、さすがにミスに呆れたのか「意味不明である」と煽りが入っている。

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ちなみに、地裁判決の6億という額は、「谷直史さんが提出した、別件鑑定の日付を3月にずらした鑑定結果」だった。裁判では、主張してないことを裁判官が勝手に採用したりはあまりない。よって、「9億になったら怖いから一応日付ずらしたら6億になるよ」って主張も混ぜておいたら採用された。

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そうすると途端に、「あれは参考に書いただけで採用されてはならない数値、それを採用するのは判決が間違ってる!」みたいなことを言い出すのが裁判だ。とりあえず全部についてゴネあうものだ。6億がかかってるんだからそりゃそうだ。

 

その他法律論やミスのツッコミはあるがこんなところか。谷直史さんは、この高裁に入ったのが2018年で5年以上経過しているわけだが、「当時からGREEの凋落やネイティブシフトのできないグラニの先行きが暗いことはわかっていたから別件鑑定の株価は間違えている」と主張する。

 

ただ、もしそう思うなら「別件鑑定で控告」すればよかったのであり、実際には控訴せずに判決が確定している。判決が確定し、認定された事実について後から難癖をつけるなというツッコミは厳しくされているので、彼の弁護士的には、株主と取締役を混同するくらいにはムカつくことだったのかと思う。

 

ちなみに、”この売却時点では”、グラニはヴァルハラ以外の黒騎士は赤字で、それをヴァルハラの黒字で補填してなんとか事業継続している状態だった、と物悲しく語られるわけだが、2013年に起こった時にはその黒騎士はまだ仕様書も作られていないはずである。ゲーム開発では仕様書はつくらないらしいが

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この裁判で争ってるのは"2013年の株価”であるから、それから5年後の2018年グラニ売却のときに、グラニの売上がどれくらい落ちたとか、黒騎士が赤字だとか、そういう話は全く理論上は関係ない。ではなぜこういう話をするのか?鑑定に対する牽制なのだと思う。

 

”こうして5年後には事業が落ち込んで、たった14億で売るハメになって、実際ネイティブシフトに失敗して黒騎士は赤字でした。その会社に本当にそんな高い値段をつけて、間違ってるとか思いませんか?”言いたいのはこれだ。理論的には全く間違ってるが、そういう印象を植え付けることは確かだろう。

 

そして谷直史さんからは、ここで地裁では出さなかった「3月時点の株価鑑定の申請」が出される。この、グラニが14億で売られたという状況になってから再鑑定をすれば、いくらなんでも別件鑑定の9億、地裁判決の6億よりは安い賠償金になるだろう。そういう算段があったのだと思う。

 

それ以外の主張は彼が見るにくだらないものにすぎなかったので、おそらく全てがこれ狙いだったんじゃないかと思う。鑑定でどこまで減らせるか、そのためにグラニ売却の時の関係者陳述書まで用意して、グラニの売却寸前時点での窮状を訴えたりしたのだろう。

 

彼側は、再鑑定の必要はない、別件鑑定(か地裁判決)で足りると主張したが、裁判所は鑑定の許可を出した。よって、ここでバンバン打ち合う戦いになる。といっても彼側は依るべき既に出ている鑑定があり、それが正しいと主張しているので、新しく主張することはない。

 

やはりここでも、高裁という戦場は、地裁勝者の防衛戦となるのだ。谷直史さんがあの手この手で、いかにグラニが安かったのかを主張してくるので、それを立証して潰していく戦いになる。

 

谷直史さんは目の前に6億円のハンマーが置かれてる状態になったので、全力で「当時のグラニがいかにお先真っ暗で価値がなかったか」を、色んな人や事務所の意見書を取ってきたりして主張する。裏切られ追い出された彼は、いやそんなことはなかったよと反論する。皮肉なものである。

 

ちなみにここが、谷直史さんが「グラニは一応会社は存続してるが、実質解体(倒産)した」と主張している被告書面であるが、「彼の追行態度」にも苦言を呈しているのは本心であろう。そう、彼は「和解は交渉するつもりすらない」といって蹴ったのだ。一応「満額の9億でなら和解する」とは言った

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彼のこの「満額で降伏するなら受けてやる」は、実質裁判における全面降伏なのでここまで戦った以上絶対に有り得ない。これは、まあ、谷直史さんの彼への「1万円で株をよこせ」とか、「10万円でなら買い上げてやるが?」とか、「全ての裁判をひっこめて和解しろ」等の意味不明な要求への意趣返しだ。

 

なりふり構わず、谷直史さんの書面に本音が書かれている。2013年の株価を鑑定する時、2013年にわかっていた事だけで鑑定するべきである。ライブドアショック前のライブドアの株価を、ライブドアショックを踏まえて鑑定してはならない。「2018年に至る事情を含めて鑑定してほしいと切に願う」らしい

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 というわけで、しょうがなく、彼の反論書面は「株式会社とは。株式の価値とは、どうやって鑑定されるべきものか。過去の株式価値の鑑定で未来にわかったことを反映しては何故駄目なのか」という説諭になってしまっている。

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ここで谷直史さんの出した主張を紹介しよう。これは株式に詳しい人には抱腹絶倒ものであろう。「2013年のグラニの株式には、DCF法を利用すべきである。予測値ではなく、会社売却までの実績値が今なら出せるので、それを採用すべきである。売却時点で解散したとして算定すべきである。」

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これを本当に採用されると思って主張したのか、とにかくなんでもかんでも手当たりしだいに安くなる主張をしてどれか通ればもうけもんと思ったのか。多分後者だとは思う。ただ、こういうのを一つずつ潰していくのは、本当に骨の折れる防衛戦となった。