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ネトゲ戦記 第一部「ゲームと才能②」

彼は自分勝手に暴れまわったUOと違って、FF11のゲーム性故に、タル組というHNMLSのリーダーになったときは、HNMという目標のために仲間の底上げをすることに努めた。たとえばケアルでヘイトを稼ぎやすい白魔導士の効率化を推し進めた。

 

これは白魔導士に限らず全員にだが、HNM戦で必要ないチャットログは全部切るように、どのチャットフィルターを入れればいいのかリストにしていたと思う。それでも彼の指示を見落としているタルタルがいると、Cionがガチ切れして怖かった。Cionはそういう人だった。

 

他には、白魔導士がケアル4だったかな?当時の最大回復魔法を彼に向かって唱えるときは、パーティチャットで@@@ケアル4→Aposだったかな、と発言するルールと、被った場合はパーティチャットの発言で遅い方がキャンセルするルールも設定した。

 

最初のうちはぎこちなくて3人くらいかぶることもあったが、ずっとこれでやると慣れてきて、自然にお互い合わせるようになっていたと思う。このルールを導入する前と後では段違いにヘイトが安定したし、MPにも余裕が出来た

 

いちプレイヤーとしてのゲームへの集中力は、FF11が彼の全盛期で、特にキャシーが強敵で11人で倒したとかはしゃいでいた頃が最も集中してプレイしていたと思う。どうしてかというと、当時彼には3秒先の未来が読めた。

 

これはもう、なんとなくとしか言えないのだが、キャシーの臭い息などのwsにはなんとなく法則性があり、また敵のTPの溜まり具合や残りHPで変化していくwsの頻度。そういったものをなんとなく全て把握するくらい経験を積み、その上で集中していると、3秒先がわかった。そうとしか言えない

 

彼は別に触る前から分かるような神のような天才ではなく、積んだ経験を感覚で処理することが得意なだけなので、FF11のHNM独占という立場は、最も彼の才能を生かせるゲームだったと思う。彼が裁判で苦労したのは、裁判が彼の苦手な出たとこ勝負で経験の通用しないゲームだからだろう

 

彼は絶対にタゲを揺らさないナイトだったが、そんな彼と一緒にHNMを狩る経験を積むことで、仲間も最適化されていって、どんどん楽に狩れるようになるのが本当に楽しかった。UOは究極のゲームだったと思うが、くだらない取り合いになる前のFF11は至高の楽しさだったと思う。

 

他に、彼は自分にケアルをかけるタイミングは絶対に詠唱キャンセルされないタイミングで唱えるようにしていた。たぶん、95%くらいで通していたと思う。敵のwsは阻害にならなかったんだったかな?それも読んで唱えてたような。もう遠い記憶でおぼろげだが、彼はケアルがうまいと自慢した覚えはある

 

彼自身の攻撃もできるだけ止めないようにタイミングを計っていたし、他にアビリティもリキャストごとに挟み、挑発もなんとなくずらしたりすぐに使ったり、研ぎ澄まされた感覚でHNMのメイン盾をずっとやるのは性に合っていて本当に楽しかった。

 

だからたぶん、彼は当時のFF11で最強のナイトだったと思う。パーティの成果とは言え、キャシーを11人で倒せたのは彼らだけで、彼らの軸は彼だったのだから。

 

Cionがいなくなる前くらいからのFF11は、彼のそんな得意分野を全て潰す方向に向かって、辛かった。追加されるHNMは彼らだけが使っていたメイン盾1枚では理論的に絶対に倒せないように調整され、マラソンと呼ばれる引き回して魔法を打ち込む倒し方が正解とされた。

 

最大64人で挑む裏世界も最悪で、18人で研ぎ澄ましてきた彼らは全く通用しなかった。ただ最大レベルで装備が欲しい人達を集めて管理する裏世界主催も、それまでのHNM独占と比べたら馬鹿げていて心底つまらなかった。Cionに投げていたが、Cionが居なくなって彼がやっていた。

 

これらは、彼が最も苦手とする、人の調整や単純作業といった仕事のようなゲームだ。不満を口に出したら壊れそうだから出来るだけ心を無にしてFF11を遊んでいた。この経験が、セガに入社して、面白い仕事もないまま彼が何年も耐えた事に繋がっていたのではないか。

 

歴史や人生にもしもはないのと同じように、歴史や人生は連綿と続いていて、その瞬間一つをとっても、そこに至る轍が必ずあるのだと思う。だから、才能を生かせて最高に楽しかった頃のFF11も、全く生かせなくてどこまでもクソゲーだった頃のFF11も、今の彼を形作るに不可欠なピースなんだろう。

 

終盤で悲惨なことになったから弱っていったとは言え、全盛期には最もプレイヤー人口の多いネットゲームで一番になったという経験は、彼に自信の芽を与えた。若い時は根拠のない自信を不安に思うことも多かったが、たかがネトゲと言われるかもしれないが、後々ネトゲこそが彼の自身の根拠となる

 

谷直史さんは、gloops時代、彼がFF11の時の話をした時、「俺はゲームがうまいわけではなかったけど、LSのリーダーとして抜群の才能があった。だから俺がやろうと声をかけたら、俺の仲間が水原くんより先に闇の王を一番に倒していたはずだよ。そうしなかっただけで」と言った事がある

 

その時は谷直史さんが何を言ってるのか全く意味がわからず、相槌すら打たずにスルーして、今になるまで何を言われたのかも思い出せなかったくらいだが、谷直史さんにも歴史があり、彼と会社を起こして社長になろうと思い立つ過去があったのだろうなと思う。

 

この話からも思うが、当時、自分は能力が低いと前置きしてた谷直史さんは自分に自信がなかったのだと思う。彼を裏切った理由も一言では表せないようないろんな感情があってのことだと思うが、一つは、自分に自信が持てなくて、彼がいつか谷直史さんを裏切る事が怖くなったのかもしれない。

 

もちろん、彼には裏切るつもりなど毛頭なく、せいぜいが一緒にやってられないとなった時に辞めて去るくらいしか無いのだが、当時の谷直史さんにはそうは思えなかったのではないか。自分の力量が低いと評価できるというのは、それだけで能谷直史さんがリーダーをやる能力はあったということなのに。

 

谷直史さんが一番好きな漫画はベルセルクだと言ったが、彼との間に起こった出来事はベルセルクのグリフィスとガッツをなぞっていると言えなくもない。確かグリフィスが一番好きなキャラだと言ってたが、だからなりきってしまったのだろうか。

 

彼もCionが失踪してすぐの頃は、裏切られたのかと怒りや困惑が湧き起こり、慌てふためいたが、一年の長い冷却期間と辛かった日々のおかげで、Cionを許すことができた。近況を聞き、失踪した原因が解決したから戻ってこれたというので、よかったねと言うことができた。

 

彼がFF11をプレイしていた期間は長く、このように、才能を生かした全盛期と、Cion失踪後の才能を全く生かせない衰弱期があった。才能で暴れ回り、飽きたら辞めたUOやブラウザ三國志とはちがって、FF11こそが最も彼に影響を与えたゲームだと思う。