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ネトゲ戦記 第三部「対谷直史さん損害賠償請求事件⑦」

日本の裁判は三審制といって、地裁、高裁、最高裁とある。では高裁は地裁と何が違うかというと、「裁判官の数が増えて、高裁担当の(やや偉いのかな?)裁判官に変わる」。他に、これは最高裁まで裁判をやって初めてしったことだが、地裁高裁は事実審という

 

事実審とは、「事実関係も含めて認定する」という意味だ。だから、地裁で認められた事実が高裁ではひっくり返る可能性がある。最高裁は法律審といって、法律の解釈だけで争うし、逆転はほぼ発生しない。だいたい逆転率は1%とかで、実質二審制という言葉もある。この高裁が最終決戦だと彼は思った

 

高裁は、まず最初に「控訴理由書」というのを出し合う。これは「何故高裁で戦おうと思ったのか、これまでの事情と戦いたい部分」をまとめたものだ。高裁は地裁と違う裁判官になっている。可能なら資料を全部読んでほしいのだが、裁判官も仕事に使える時間は限られるので、控訴理由書で要点を抑える。

 

まず彼の控訴理由書を見ていく。判決の概要で、どこが正しい判断だったかを指摘したうえで、どこの判断を変えてほしいのかがまとめられている。彼は地裁では勝ったので、要求は簡潔に「これは5月の株価決定に依るべきである」が主で、認定された谷直史さんの不正行為などについては異論がない

 

どれくらい勝ったかによるが、基本的に勝った方は、勝った点は全面的に「うむ」と同意するだけなので、控訴理由書はあまりおもしろくならない。対して、負けた方の谷直史さん側は、逆転を狙うのであの手この手がまた飛び出すことになる。

 

谷直氏さんの控訴理由書は全部で44ページにも及ぶ大作なわけだが、まず「はじめに」で、今回の裁判にかける熱い思いが切々と語られている。「ゲームが大ヒットした」「グリーと戦略提携してPRだした」「その株を不法行為で取得したからこうなった」とかは省かれているが。

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最初の主張は「8万円出資しただけで6億とか常軌を逸してる。常識で考えておかしい。その5年後会社売ったときは全部で14億だった。これと比べて考えて」らしい。うーん、なかなか斬新な考え方だと思う。「その瞬間での時価」で売買される株式という制度を根底から否定してないかな。

 

重ねて、「ソーシャルゲームはヒットの発生・継続は極めて稀である」と言いたいらしい。まあ、それについては特に異論はないが、ヴァルハラゲートはその極めてまれな大ヒットをしたんだから、それは論じる必要はないとは思うのだが。

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グラニが倒産したのは不当な判決のせい、ということで長々と平家物語みたいな話が続く。瞬間的には90億の価値があったものが、14億まで衰退したのは、経営陣の責任を問うのならわかるが、判決のせいではないと思う。判決で企業価値が減ったわけではないのだから。判決は彼がされた事の賠償判断だ

 

他に、このマイネットへのグラニ売却をアシストしたらしい人の「私はソーシャルゲームM&Aには詳しいが、当時のグラニはもっとやすかったはず」という意見書とか、会社法に自信がある人の「この判決は会社法の解釈を間違えてる」とかの意見書があわせて提出された。

 

勝った方は、不満のあるところだけ変更してもらえばよいわけだが、負けた方は全部について主張してどれか一つでも通れば良いという必死な戦い方をするので、地裁でスパッと切られた主張も再生怪獣みたいに登場する。たとえば、「資金調達の目的だった」とか。この辺は高裁の判決でまた切られる

 

なぜ資金調達が必要だったかというと、「4月末には7280万の入金が予定されてたが」、「予定されてた支払いをすると口座に76万しか残らないので」、「予想外の出金の可能性に対応するためになんとしても899万円を用意する必要があった」らしい。なかなかいいセンスしてる。

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これに至っては単純なミスだと思うのだが、「VDG草稿の約200万円に比べて、899株も発行し、1株1万円で899万円の払込は著しく低い」という判決文を「899万円が必要だったことはVDG鑑定と関係ないから裁判官のミスだ!」と騒いでる。こういうノリで大作を書いてると、こういうミスも生まれるんだろう

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また、こっちも多分ミスなのだが「判決で彼を追い出すのが目的というが、彼は仕事仲間と揉めたりして自分から会社を辞めたんだ!!!!だから追い出す目的は認められない資金目的!」との事らしい。言うまでもないが、判決のいう「追い出す」というのは「株主」からで、会社辞任は争いがない

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彼が谷直史さんと夜中にイラストレーターの件で大喧嘩し、「やめます」と書き込んだことを証拠に、彼が自分から辞めたから追い出す目的はなかった!という長々としたほじくり返しが続くが、スタート地点の「(株主から)追い出す目的」を間違えてるのでどうしようもない。

 

この書類では「俺らは大学のサークルとかじゃなくて会社なんだから、いっかい辞めるとまで宣言して撤回するなら、きちんとけじめを付けないといけないと思う。ネットから落としたのとかでいいから始末書を出してくれ」と言われて出した始末書が、彼を裏切った理由になっていた。そんな馬鹿な

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多分、理由書に書きやすい理由をひねり出したらこれになったんだと思うんだが、いくらなんでも、立ち上げから一緒にやってきて取締役になった彼を追い出す理由が、「提出した始末書がネットのテンプレで誠意が感じられないから」はあんまりで泣きたくなった。反省文で指導される小学校か?

 

あとは、判決で徹底的に認定された不正な1万円新株発行については、「専門家の言うとおりにしただけ」が出てくる。ちなみに専門家(VDG)は1株200万円としており、その専門家にすら従っていないと判決でも切られたのだが

 

他に新しい主張としては、「会社法は有利発行を認めているので、賠償額は希釈した総額ではなく、希釈した総額から認められている有利発行額分を引いた分である」というのが出てきた。これは法律論の話になるが、彼にも新しくて"面白い"視点だった。採用されるべきとは思わないが。

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高裁といっても、地裁から新しい証拠とか真実が明らかにならなければ、基本的には、「負けた側が新しくだしてきた主張」を、勝った側が潰せれば勝ちという防衛戦になる。谷直史さんの控訴理由書は、素人の彼にも明らかなミスが散見されるし怖い主張は無いと思ったが、油断せず、勝ちきらねばならない