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ネトゲ戦記 第三部「対谷直史さん損害賠償請求事件⑤」

谷直史さんからの反論として核のようなものが出てきた。これまで彼は存在すら知らなかった「VDG草稿」や、入倉孝大や相川雄太が同意していたMOMとやらも当たればいいやで撃った弾の一つだったろうが、「VDG草稿を基準に損害を計算すべきである」という。

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つまりはこういう主張だ。「弁護士にアドバイスを求め、VDGに鑑定してもらったんだから、それは正しい行動であって、その範囲でのみ損害を賠償すべきだといえる」。これは、谷直史さんが適切にこのアドバイスに従い、200万円で新株発行してたら、崩すのが難しかったかもしれない。

 

谷直史さんは「彼から株式を合法的に取得するために弁護士に相談してVDG草稿を取り寄せ、1株200万円(ただし原告はこれを認めるものではない)という認識を得た」「臨時株主総会を開き、谷直史さんに株を集める必要があるとして新株発行を議決した」「資金調達に1株1万で899株発行した」なるほどなあ。

 

といっても、彼は谷直史さんのこの時の弁護士は、全力を尽くしたと思う。だって、何回も何人も弁護士が交代してる。裁判では、一度主張したことは撤回できないわけだから、こういう継ぎ接ぎみたいな主張でも戦わないといけない。

 

彼の法律家は熱血だったので、意見書の中で「このような事例が認められると、少数株主は無意味になり、創業時に株を持ち合うことも無意味になる。日本の起業が死ぬ」と述べていたのだが、谷直史さんの反論はこうだ。「事前にそれができない契約書を結べばよい」なるほどなあ。俺は結んでなかったわ。

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VDG草稿についての彼からの反論は「仮に、500万円の価値があるものを、200万と勘違いして壊したとしても、弁償しないといけないのは500万だ」彼の弁護士は、小学生にするような説明をさせられた時には、「論を俟たない」という言い回しを使う。

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谷直史さんの反論は難癖じみてきて、彼が引用した法律学者の意見書の中で「このような決議に賛成する合理的な理由はないため、何らかの利害関係が彼以外の株主にあったと推認できる」と書いたのを理由がないと論難してくるわけだが、入倉孝大が後に証人尋問で真相を語ってくれる。

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ゲームのヒット予見性について、GREEとの戦略提携を指摘した。彼はその草案を夜中に見せてもらった時に、グラニの取り分が減る代わりに、TVCMを無料で打ったりしてくれたり、様々なバックアップが約束される、これをGREEから引き出せたからMobageからGREEに変えたんだと谷直史さんが言った契約書だ。

 

谷直史さんからの反論はこうだった。「契約書を締結し、プレスリリースも出し、その中で実際にグラニの取り分が減るような条項やGREEのバックアップについてざっくりと書かれているが、具体的なGREEのバックアップは何も決まっていなかった」そんな契約書にサインしたら駄目ですよ谷直史さん。

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この辺で、お互いに主張と争点の整理に入った。裁判というのは、まずお互いに主張を出し合うゲームだ。カードゲームにたとえると、デッキを場に出していく。出す順番を考えたり、相手のカードにトラップカードを出したりもする。それが終わると、囲碁のように、裁判官が整理を始める。

 

そして、ここまで何年も裁判を戦ってきて、ついに「証人尋問」が開かれることになった。逆転裁判でやってるアレのモデルになったやつだ。裁判は基本的に「準備書面」という弁護士が作った書面を提出しあうために2ヶ月に1回ターンを回すゲームだが、ここだけはリアルタイムで、本人が尋問される。

 

証人尋問には、入倉孝大、谷直史、彼の3人が呼ばれた。尋問は2つあり、先に主尋問(味方の弁護士が尋問する)、つぎに反対尋問(相手の弁護士が尋問する)の順だ。入倉孝大(15分、20分)彼(25分、15分)谷直史(40分、40分)と決まった。

 

まず入倉孝大は、聞きたいことはあるが要点に絞れるので短い。彼については、本件では当事者ではあるものの、不正行為の関係者ではないので、彼側の弁護士が説明のために長く時間をとった。谷直史さんについては中心人物なので、双方聞きたいことも言わせたいこともあってタップリになった。

 

長く裁判を、7年も裁判をやってきたが、一番面白かったのはこの証人尋問かもしれない。どういう質問をすればいいか入念に準備し、相手の質問や、言ってくることを想定した。まるでUOのギルド戦争のときのように。彼と彼の弁護士はとても濃い準備をして、証人尋問に臨んだ。

 

そうだな、彼は裁判というゲームもむいていたのかもしれない。彼のスキルセットは裁判にむいていると誰かに言われた気がする。最初は入倉孝大の尋問からだ。入倉孝大と顔をあわせるのも何年ぶりだったか。

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入倉孝大の証人尋問も、最初は相手も想定してるであろう質問を出していく。たとえばこの長説明なんかは、絶対に説明をうけて頑張って暗記してきた内容だと思う。もう明らかに彼から株を取得するのが目的だということは隠してない。あくまで谷直史さんが不意に資金調達を思いついたってシナリオか

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ここで彼と彼の弁護士が入倉に狙っていたのは、「不正目的」を裏付けるなにかだ。用意していた質問にすべて弁護士に教わったとおりの回答が帰ってくる。そして一通り質問が終わり、「KPI」の用語説明等脇道に一旦話が振られる。その間に、どこをつくか作戦を立てる

 

話の流れで、自分は会社の将来について期待していたと話した時に本命の質問を打ち込んだ。「それについて谷さんからはどういう説明をされてました?」意識の間隙を抜いたのか、入倉孝大は「役職や報酬でしっかり手厚く対応すると説明されてました」と証言した。彼の弁護士は影でガッツポーズをした

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谷直史さんの弁護士が長々と積み上げてきた、MOMの理屈は吹き飛んだ。入倉孝大は谷直史さんから将来の報酬を説明されていたと証言した。彼と彼の弁護士の尋問は、入倉孝大のガードを抜いた。

 

ちなみに尋問には実は3つ目がある。「裁判官」からの尋問だ。本人尋問と反対尋問が終わったあと、「裁判官が判決を書くために知りたいことがあったら」尋問する。入倉孝大に対して裁判官が聞いたのは、「当時から実際に報酬が上がりましたか」だった。彼の弁護士はまたガッツポーズした。

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次は彼の尋問だ。彼は高揚していた。攻撃は入った、あとはこの自分の尋問で防御に成功すればいい。不安はなく、自信と高揚に包まれていた。やるべきことがはっきりとしていて、十分に準備してきたからだ。

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彼は尋問の練習のときに、絶対に暗記をしなかった。無理に暗記をしたら、覚え間違えたときに失敗すると思った。彼は3回、アドリブで、敵対的な質問を用意した彼の弁護士の尋問に答えた。彼の回答は毎回細部でちがっていたが、3回とも問題となる回答はなかった。だから自信があった。

 

谷直史さんの弁護士は、GREEから、非公開の各社売上情報まで貰ってきて彼にそれを突きつけ、「ヴァルハラは特別でした」と言わせようとしてきたとすぐにわかった。だから、相手の想定してない回答をした。この書面からはわからないだろうが、この時弁護士は言い詰まってかたまった。成功した。

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その後の攻撃尋問も大したことなく防御しきった。裁判長から彼への質問は、「彼は中心人物なんですよね。じゃあなんでそんな中心人物を追い出そうってなったと思いますか」という質問だった。それは彼も知りたいけど、質問するべきは彼じゃないんじゃないかな。裁判官も質問で「なんで彼は"そこまで"されなきゃいけなかったんですか」と。

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最後は谷直史さんの尋問だ。彼と彼の弁護士は、入倉孝大以上の手柄をあげるべく、前のめりになった。だが、肩透かしを食らうことになる。

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谷直史さんと味方弁護士のやり取りは書面でみてもわかるくらい明らかに何度も練習して”暗記”してきている。まるで下手な劇団の小芝居を見せられているみたいだった。多分入倉孝大もそうだったのだろう。彼に対してとれなかった「言質」は「自作自演」されていた。笑った。

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この谷直史さんの尋問では「異議あり」まで飛び出た。本当にリアル逆転裁判だった。彼の個人的な感想だが、多分これも谷直史さん側の、「時間をつぶす」戦術だった。なぜなら、こういう異議で時間を食われたり、谷さんの回答があまりに遅くて、時間切れになったからだ。

 

「なんでこんな鑑定書が今になってはじめて出るんですか」と質問すると、当事者であり発注者であるはずの谷直史さんが「そうなんですか?」ときたもんだ。さらにまた「異議あり」で時間稼ぎ。「覚えてないけど記録にあるならそうだと思います」のらりくらりとした尋問にしかならない。

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谷直史さんの回答は基本的に「覚えてない」「記憶にない」「はっきりしない」「覚えてない」「相川雄太に任せていた」。なるほどなあ。そういう作戦か?だとしたら適切だ。やはりこの時の弁護士は手強いと彼は思う。

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谷直史さんの陳述書(本人が言いたいことをまとめて書いたもの。証言の書面版)を引用して質問しても覚えてないですが返ってくるので、「これ貴方の陳述書ですよね?」と聞いたら「みんなで作ったので覚えてないです」。なるほどなあ。

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「1株200万円くらいという鑑定を受けて、900万の資金調達の必要があったなら、4,5株発行するだけでよかったんじゃないですか?」と聞くと、「わからない。今でもちょっとわかんないくらいです。」

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結局谷直史さんの尋問は、時間がむやみにかかるので、用意していた質問を全部ぶつけることはできなかったし、回答は「記憶にない」の一言で済むくらいのものだった。裁判官からの質問は「どういう意図で、彼の株を合法的に0にしてやるとかできると発言したんですか?」だった。

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谷直史さんの尋問は肩透かしだったが、不誠実さは裁判長にも見えただろう。そして、入倉孝大への尋問は成功し、彼への尋問も防御に成功した。裁判所を出たあとの打ち合わせは、まるでUOで戦争に勝った後の蛮族達のように、きゃっきゃはしゃいでいた。

 

尋問も終わり、あとは判決だけだ。判決の前に、谷直史さんから和解の依頼があった。「請求の7.5億ではなく3億円で和解してほしい」とのことだった。彼は回答した。「断る。判決を見たい」

 

彼の弁護士は、「普通はこの金額なら和解をするものです。高裁まで更に続く費用、相手が倒産して回収できない場合、資産隠しなどのリスクもあります。ですから、普通の人になら必ずこの裁判はここで和解したほうがいいと言います。でも貴方が決めることです」と彼に言っていた。

 

裁判官でさえも、本当にこの和解を蹴って良いんですか?と困惑気味だった。勝てるかわからない、回収できるかもわからない、3億のほうが良いんじゃないですか?後悔しませんか?と。彼は「回収できるかとかじゃなくて、私は”判決が見たい”と言ってるんです」と言った。裁判官はドン引きしてた。

 

彼は、「著作権裁判」で和解したことで心が軽くなり、最後まで戦うという結論が先にあった。ここで和解したら、「もし和解せずに戦ったらもっと勝ってたかもしれないと後悔してしまう。俺は折れてしまう。俺は3億円で心を売りたくない。」と。0円~数億。判決までのストレスは凄まじかった。

 

 実際に、回収の算段もついてなかったのだ。この時点では。判決の予定日の3日前に、「判決文が間に合わないので判決は延期する」との連絡が裁判所からきた。それほどの重い事件なのだ。そして本来予定されていた判決日、グラニの事業が売却されたというニュースが飛び込んでくる

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