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ネトゲ戦記 第三部「対谷直史さん損害賠償請求事件②」

訴状に対する最初の谷直史さんからの反論は、当時グラニがgloopsから訴えられていたこともあって、本筋とは違うところでも面白い主張がされている。「谷直史さんはgloopsを辞めた時点では新会社設立など考えておらず、辞めてから設立を思いついた」とか。

 

これは彼の仕事についての主張もそうで、著作権で争っていた頃は「彼はワガママを言うから名刺にディレクターとつけてやっただけだし、成果物は手直しをしないと使えないゴミで、実質95%は入倉孝大や谷直史の仕事。取締役にしてやったのもワガママを言うからしょうがなく」だった。

 

ところがこの裁判においては最終的に「当時は彼がやめたせいで、その穴を埋めるために大忙しだったから全部相川雄太に任せたりしていた、覚えてない」と、証人尋問に呼ばれなかった相川雄太にぶん投げたりしていた。5%が抜けたくらいで記憶が飛ぶくらい忙しくならないでほしい。

 

裁判というのは「裁判官わからせゲーム」ではあるわけだが、裁判官はそれぞれの業界や事情について詳しくない。裁判におけるもう一つのゲーム性は、「一貫性保持ゲーム」であると思う。一貫性を保持する必要は厳密にはないのだが、相手に気づかれると、それは攻撃される弱点となるからだ。

 

その点において、谷直史さんは最初のうちは好き放題にストーリーを描きまくっていたが、いざ矛盾が頻発した終盤になると、それ以上矛盾にならないよう、記憶にないとか覚えてないとか、相川雄太に任せていたに終始していた。これが一貫性保持ゲームに失敗するということだ。

 

その点、たとえば最初から覚えてないで一貫していたら、彼側は戦いにくかったのだろうなと思う。ある程度は勝てたかもしれないが、これほどの立証は出来なかっただろう。谷直史さんは彼に完全に勝とうとして、スキを見せ、より深く負けた。彼はそう思う。

 

このハイパー希釈取得メソッドについて、谷直史さんの反論は次のようなものだった。「谷直史さんは法律の専門家ではないのでわからない。弁護士に相談して言われたとおりにやった。だから谷直史さんには責任がない。」

 

言うまでもないことだが、弁護士に相談したからといって、実行者の責任が消失することはありえない。その弁護士を不適切なアドバイスをしたとして別途訴えるのは勝手にしてくれればいいが、彼に損害を与えたことには、谷直史さんが弁護士に相談したことはなんの免罪符にもならない。

 

また、別件鑑定(株価決定でのグラニ時価総額が90億との鑑定)については、そちらでも主張していたことだが、「ヴァルハラゲートに限らず、ソーシャルゲームというものはいつデータが壊れてもおかしくないので、業績が不透明なものであり、別件鑑定は間違っていると主張してきた。

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普通はミスで飛ばないよう、サーバエンジニアが様々な予防線を張るものであるが、これが「裁判官わからせゲーム」だ。谷直史さんはソーシャルゲーム会社の社長である。だから当然これが無茶苦茶な主張だと自分でわかってるはずだ。あるいは、谷直史さんはソーシャルゲーム関係の株価全部に異論があるらしい

 

他にも縷々、無茶な論建てで法律論の主張もしているが、それはここでは割愛する。この裁判が始まった時点では、谷直史さんは「会社登記時には1株1万円だからこの時も1万円でいいと思った」と言っている。”GREEとの戦略的業務提携も発表され、数億の売上があり、ニュースを賑わせている会社”が、である

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この主張も二転三転していくのだが、この時点ではまだ「完勝」を狙って、多少無茶苦茶なことでも主張していた。または、最初言ったことに引っ込みがつかなくなったのか。どちらかは谷直史さんでないとわからないが。株価決定で時価総額が90億とついた会社を、時価総額100万だと思ったというのだから

 

これも読み直していて気づいた彼の弁護士のキレポイントだが、谷直史さん側の「会社法を悪用した損害賠償請求であり却下されるべきである」という主張に、「お前らこそが会社法を悪用したのである」とキレている。わかるようになってから読み返すと見えてくるものだ。

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なお、谷直史さん側から「ちゃんと弁護士に相談した(だから谷さんに責任はない)」という証拠として、弁護士相談料の領収書が提出された。そこには、「対水原氏 創業メンバーからの株式取得手続きの件」と書かれていたのである。語るに落ちるとはまさにこのことだ

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「資金調達のために新株を発行した」「事前に弁護士にも相談したから合法」として出てきた領収書の券面が「創業メンバーからの株式取得手続き」である。どういう戦略ならこういう証拠が出てくるのだろう?彼にはわからない。

 

この裁判のあたりになってくると、谷直史さんの主張はなかなか面白いことになってくる。「谷直史さんは、彼が株を持ち続けることにリスクを感じ、”適法に彼から株式を取得”するために弁護士に相談し、スキームを組んでもらい実行した。よって”彼を排除する目的ではない"(資金調達目的である)」日本語でおk

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なんだろう?ネチネチとたくさん主張を積んでここからも何年も戦ったからには、勝負を投げたわけではないのだろうし、本当にこれが通じるとおもって主張したのだろうか?読み返していても不思議に思う。

 

弁護士に相談したから合法、との主張にも彼の弁護士はキレ散らかしている。「そのような法理論は存在しない」。現実の裁判には、逆転裁判のようなわかりやすいブチギレバトルは存在しない。しかし、分かる人にはわかるブチギレバトルはあるのだ。

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これに対する谷直史さんの反論は相変わらず「会社の価値があがってるなんてわからなかった」である。”ゲームがリリースされ爆発的にヒットし、グリーとTVCMなどを含む戦略的業務提携を結んだ会社の企業価値”が100万円だと思った、というのが引き続き谷直史さんの主張だ

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谷直史さんの反論書面のまとめを読むと、「彼には500万を無茶苦茶な契約書で出させて、自分は金が無いから出さずに株式の63%を取り、更に生活出来ないから自分には給料を出すと言った」谷直史さんが、900万が何故かあったから、資金調達目的で1株1万円で発行済100株の9倍、899株発行したらしい。

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なぜ899株かというと、1000株を超えると資本金が1000万以上になってしまい、税制的に少し不利になるから999株で止めたのだろう。もしその縛りがなければ何倍に薄めようとしたのかわからない。まあ、こんな主張をされれば彼の弁護士がキレるのもわかる。今読み直しても腹立たしい。勝ててよかった。

 

更に追加で谷直史さんから出された反論は「株主総会で彼と谷さん以外の株主もこの新株発行に賛成していたから合法」である。後の証人尋問で入倉孝大は、「君には会社での待遇で後で報いるから」と賛成するよう谷直史さんから説得されていたと証言した。もちろん株主総会の決議で利益供与を約束してはいけない。

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なお、この辺で軌道修正したのか、谷直史さん側の主張する新株発行の目的は、「グラニの経営に悪影響を及ぼす彼の株を減らすことを彼以外の株主全員が望んだからと資金調達の二本立てである」に変わった。「谷直史さんが弁護士に相談したから資金調達」よりは歯ごたえのある主張になった。

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また、資金調達の目的についても「4月の末にはグリーから入金があるのはわかっていたし、一応それまで金はもつ予定だった。しかし、”不測の事態が怖いので”谷直史さんの隠し資産900万を”株価が上がってるかわからないから1株1万円で"新株に当てた」らしい。なるほどですね~

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まあこれらの主張は全て裁判所に「資金調達の必要性を説明できてるとは言えない」「主目的は彼の排除である」とぶった切られてるので笑い話にできるというものだが、例えばあと少し証拠が足りなかったり、あと少し谷直史さんが巧妙だったらと思うと背筋が寒くなる。

 

ここまでがこの裁判の序章といえるだろう。ここから彼と彼の弁護士は、これらの主張を突き崩していく。崩すほどに苦し紛れに新しい過去の証拠が登場し、過去に本当に起こっていたことの真相が明らかになっていく。そういう意味で、お互いに主張を一旦並べあった序章はここまでだ。