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ネトゲ戦記 第三部「収益金配分請求訴訟⑥」

地裁で敗北したが、彼は高裁で戦うことにした。あくまで彼の個人的な感想であるが、地裁は「厳密なところまで踏み込まずに、8割あってればいいだろうという判断で判決を出すところ」、高裁は「かなり厳密に検討して慎重に判決を出すところ」だと思う。

 

彼側の戦略は地裁と同じだ。谷さんが「喪失した」と嘘をついたが都合のいいところだけ証拠で提出してきたチャットワークのログを、裁判所の命令で出させるという「文書提出命令」が狙いだ。控訴理由書も軸はこれになっている。

 

谷さん側もさすがにどこを守るべきかは理解しているようで、「チャットワークのログは重要ではない、なぜなら口頭で会話できる位置にいたから、口頭で指示出しをしていたからだ」という新しい主張が追加された。開発現場でログを残すことの大事さは言うまでもない

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また、「証拠保全」という、裁判で必要な、証拠隠滅されそうな証拠を抑える仕組みのときには「喪失した」と言ったが、あとから証拠として出てきたことについては、「あのときはわからなかった」という説明が出てきた。何度も言うが、メンバーを削除してもログは部屋に残るのでこの認識はありえない。

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ここで、谷さんは重大な主張をした。彼や谷さん側と全く関係のない第三者の名前を出して、「この人もこう言っていた」と自分に都合よく主張したのだ。なぜ、この裁判に全く無関係の第三者の名前を谷さん側から出したのかはわからない。

 

その主張は、谷さんの主張に沿うものであったが、彼はおかしいと思った。谷さんの言ってることはおかしいのであるし、そんなことを第三者が言う訳はないと。というわけで、彼はその第三者に直接聞きに行った。こんなことを本当に谷さんに言ったのですか?と。

 

すると、「いやこんな谷さんが言ってるような事は言ってない。こういう話をしたし、谷さんはその時こう言ってたよ」と、陳述書(裁判における証言を書面にしたもの)を書いてくれた。クリティカルヒットだ。谷さんの主張は崩れ始めた。

 

本当に彼は、何故谷さんが、第三者の名前をだして、しかも嘘を言ったのかわからない。これこそ墓穴を掘るというやつだ。あるいは嘘をつこうとしたのではなく、何かと記憶違いをしたのかもしれない。まあ結果として嘘になってしまったわけだ。

 

なお、谷さん側からは、「その人は記憶違いをしている。谷さんの記憶していた内容こそ正しい」という苦しい言い訳が出てきたが、本人の証言と谷さんの証言、どちらに信憑性が置かれるかは明白だ。

 

この苦しい言い訳のあと、ついに「文書提出命令」が通り、ずっと彼が主張してきたチャットワークのログが提出された。その内容は彼の主張に沿うものであり、谷さんの主張はいよいよもって苦しい事になった。

 

もう、このログは、ゲーム業界の人間に見せれば誰でもわかるレベルで彼がディレクターで現場で指示していたものだが、これも”裁判官にわからせゲーム”として攻略せねばならない。というわけで彼と彼の弁護士は「指示の発言数」や「完了したタスク数」を説明した

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また、”ほとんどが谷さんや入倉の仕事で、彼はほとんど制作していなかった”と谷さんが主張した数々に対して、実際のログを示した。ここまでずっと使えなかったログがついに出てきたから、彼と彼の弁護士はノリノリで主張している。

 

裁判においての”裁判官わからせ度”を、業界用語で「心証」といい、これは裁判官の心の中の印象のことだが、彼にもわかるくらい「心証」は傾いていたと思う。文書提出命令をついに出してくれたのもそうだし、その内容がこれまでの主張を吹き飛ばすものだったのだから。

 

なお、このチャットワークログの文書提出命令に関しては、谷さん側に対し第三者に開示しないという「誓約書」を提出しているので、本当はもっと語りたいことがあるが、ここでは語れない。そうまでして提出を求めた甲斐のあるログだったということはできる。

 

「チャットワークのログを見れば、その量からも彼の指揮割合が高いことは明白である」という主張に対しては、「彼は口下手なのでチャットワークに書いてただけで、谷と入倉は口がうまいのでチャットワークを使わず口頭で主に指示していた」という反論がきた。本当に苦しい。

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谷さんはあきらかに口下手だったし、入倉もあきらかに口下手だったのはさておいても、開発現場で口頭を主として指示することがいかにあり得ないか。言った言わないにもなるし、聞き間違えも発生する。彼は口頭で指示したあと、チャットワークにログを残すため打ち直していた。

 

さて、ついに出たチャットワークのログを元にノリノリで攻め立てていると、裁判官から「和解の示唆」があった。結論からいうと彼はこの件で和解した。そして、その和解条件に秘匿条項が含まれるため、和解についても詳しく話す事ができない。

 

地裁では「420万を支払え、他は認めない」とだけの判決だったが、裁判官が示した和解案は、彼が悩み、そして了承するような条件だった。彼は、この和解条件は実質勝利だったと思っている。和解の調印式で、谷さんが目を血走らせていたからだ。

 

谷さんは後の損害賠償請求裁判で「株価決定の8000万と、この和解条件で支払った金のせいでグラニは倒産に追い込まれた」と主張しているのもある。あるいは、和解を蹴ってぶっ込めば、もっと大きい勝ちを取れたかもしれない。だが、負けて意気消沈し、後の裁判でも満足に戦えなかったかもしれない。