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ネトゲ戦記 第三部「収益金配分請求訴訟③」

彼の正式な攻勢である準備書面に対し、被告から正式な反論である準備書面③が出てきた。何度も繰り返すが、裁判とは”裁判官に信じてもらうゲーム”であって、”真実を証明するゲーム”ではない。それはこの裁判を通して強く学んだことである。

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たとえば、これは彼が企画書を共有し、谷さんが「さすがやで!」とコメントしたから、谷さんの言う”彼が作った企画書は出来が悪かったので採用されてない”は嘘だ、という話に対する反論である。”言ったかもしれないが、それはこういう理由だった”。裁判において内心というものは、都合のよいものだ。

 

これは、「そのような言葉をかけたことはない」と言うと、もし彼が証拠としてログを保持していたら、「異議あり!」となってしまう。だから、「そのようなことを言ったかもしれないが、記憶にないし、仮に言ったとしてもこのような意味である」となる。裁判でこんな言い回しをする時点で真実はわかる

 

だから彼と彼の弁護士は、持っている証拠を全部出さずに小出しにして、自分たちの持つ数少ない証拠で突ける矛盾を狙った。致命傷な証拠があればそれを突きつければよいが、手持ちの証拠が少ないからこのような戦い方になった。

 

そして、前準備書面で、彼が「仕様書のクセ」を含めて彼が仕様書の殆どを作成したことを説明し、仕様書を1つ1つ解説したことに対し、谷さんからの反論はこうだった。「ゲーム開発では事前に仕様書を作成しない」

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ゲーム業界で働いている人が聞いたら噴飯ものであろう。仕様書もなくどうやってゲームを作るのか。いや、たしかに仕様書なしに口頭で進められる現場もあるが。だが、これこそが裁判だ。こういった、わかる人にはわかる嘘を、”裁判官にわかるように”全て崩していかないといけないのだ。

 

また、マスタデータに関する反論も、彼が作ったかどうかに関係ないところに論陣を張ってきた。「マスタデータが重要かどうかはエンジニアのさじ加減一つなので、マスタデータが重要とはただちに言えない」これも噴飯ものであろう。企画の仕事の集大成こそがマスタデータであるからだ。

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”ゲームの面白さを決める最も重要なものは「作り上げる過程に曖昧な概念として誕生した何か」であり、マスタデータの上位存在である” すごい。仮にそれがあったとしても、それを使えるようデータ化したものがマスタデータだと思うが、より上位の存在を定義することでマスタの重要性を貶める作戦か

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谷さんの作戦はこうだ。「彼が作ったマスタや仕様書データは、実際に彼がほとんどを作ったとしても、谷さんがふんわりと生み出したイメージ概念こそがゲームにおいて最も重要なものであり、それをもとに指示して作らせただけだから、彼は谷さんのイメージに従って手を動かしただけで著作物ではない」

 

カードマスタ(アビリティの強さやパラメータ、フレーバーテキスト等カードに関する全て)についての反論も「谷さんはカード枠のデザインとコンセプト(実例は示さない)を決めた。これは超重要であるから、谷さんこそが創作者である」だった。

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入倉がやりたがったので、多分無理だと思ったが2ヶ月を与えてやらせていたが完成せず、そして彼と谷さんの仲違いの原因の一つとなったレイドバトル改修事件も「彼が駄々をこねて無理にブラッシュアップしたが3割しか寄与してない」になっていた。

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これもゲーム業界にいれば言うまでもないことだが、「担当の企画が変わって違う人が作る」なんてのは、「そいつでは作りきれなくて、もっと力量が上の人が代わった」以外にありえない。どうして他人の担当箇所をわざわざとりあげてブラッシュアップするのか。ましてや、レイドバトルはヴァルハラゲートの超目玉コンテンツである。

 

”ほぼ完成していた”が”3割も手直しするところがあった”あたりで既に自己矛盾を起こしてる気がするが、これを裁判官にわかるように説明するのは本当にしんどい。裁判官はゲームを作ったことがないどころか、ゲームをやったことがあるかもわからない。

 

ちなみに実際は3割どころか、入倉が2ヶ月かけて作りきれなかった分は全部捨てて、1から1週間で、毎日日付が変わるまで会社に残って作ったのであるから、彼が作ったのは10割である。

 

このときばかりは、彼はこれがいかに噴飯もので荒唐無稽でありえない主張の数々であるかを彼の弁護士に熱弁したのだが、弁護士が作ってきた原告準備書面③は、彼の熱意からすればとてもあっさりしたものだった。ただ、任せると決めたことではあるので、彼はそれに了承した。

 

だがそっと、しかし致命打になるかもしれない一撃はしのばせた。グラニではグラニドメインやメールアドレス取得時からチャットワークに移行したが、それ以前は個人メアドでYammerを使っていたのだ。そして、Yammerは、発言が全てメールで送られる。彼の手元にはログがあった

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これは当然谷さんも知っていたことではあるのだが、あるいは気づいていなかったのかもしれない。Yammerのログを突きつけられるという前提であれば、してはいけない主張があるように思うからだ。ただこれは、谷さん側の事なので、どういう認知と作戦だったのかは彼にはわからないが

 

彼は思うのだが、谷さん側に彼がいたらこの裁判で彼は負けていた。スタート時点での立場の差は圧倒的過ぎる。そういう意味では、ゲームでは敵側にも彼がいないことをずっと嘆いてきたが、ここではじめてそれに感謝した。

 

一応、彼がどうしてもこれはおかしいと主張したことも入れられているが、今読み直せばわかるのだが、ここは裁判ではあまり重要ではない。お互いの主張は水掛け論に過ぎず、裁判における攻守にならないからだ。だからこれを書面に入れたのは、彼を慰めるためだろう。

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この時の彼側の作戦は、”この裁判での致命打となるチャットワークのログを文書提出命令で出させること”だった。それに関する話を振って、そこで水掛け論になったら、”じゃあ文書提出命令で出してもらってハッキリさせましょう、存在しないって嘘ついたけど有ったんですよね?"という流れだ

 

これも、一度存在しないと嘘をついたのだから、その嘘を守って、チャットワークのログが一切出てこないほうが彼側は苦しかったと思う。彼ならそうした。スケベ心を出して、自分に都合のいい部分だけ、もう消失したと言ったログから出してきたから、じゃあ有るなら出せよという作戦が使えたのだ。

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