空白雑記

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ネトゲ戦記 第三部「収益金配分請求訴訟②」

被告の第一準備書面が出てからが、原告の攻撃ターンだ。今回の場合、証拠保全等で致命傷の証拠は抑えられなかったので、立証を積み重ねて行く必要がある。彼と弁護士が取った作戦は、「証拠の小出し」で相手の矛盾を誘う作戦だ。

 

うっすらとしか思い出せないが、この原告第一準備書面を組み立てるのが一番キツかったように思う。慣れないということもあるが、彼は、谷さんがここまで現実を捻じ曲げて、嘘をぶちこんで来るとまでは思っていなかったのだろう。まさに腸が煮えくり返る、という思いを経験した。

 

彼は、裁判について詳しいわけではないから、法律や裁判の戦略については弁護士に任せることにした。何がおかしいのか、なぜ矛盾するのかを全て箇条書きにして書き出して、ゲーム業界を知らない人を想定して説明した文書を渡し、どれを採用するかは弁護士に全て一任した。

 

その上で弁護士が仕上げてきた文書をあらためて彼も読み、おかしいところやわかりにくいところを直して裁判所に提出する。だいたい毎回こういう流れだった。だから彼が裁判においてした判断は、基本的に「代理人である弁護士」には出来ない判断だけで、法律的な判断は全て弁護士に任せた。

 

こういうやり方は珍しいのか、最初のうち何回かは弁護士から彼に「ここはこういう判断でいいか」という質問がきたが、彼は毎回「法律的な判断は任せる」と答えていたら聞かれなくなった。結果勝てたのだから、この任せ方で良かったのだと思う。

 

第一準備書面で採用された指摘は次のようなものだった。①入倉がマスタの大半を作成したというが、入倉は最後までgloopsに残り勤務しており、グラニに合流したのは最も終盤であり、ヴァルハラゲートが一旦mobage用に完成する1ヶ月前であった。その入倉が大半を作成できるというのはおかしい。

 

②職務著作だというが、雇用契約や雇用契約に準じるものも存在せず、独立して参加していた。 これは弁護士に聞いてみないとわからないところではあるし、ネトゲ戦記は基本彼の視点で語るものであるから確認はしないが、多分ここは相手に立証を迫るポイントだったのだと思う

 

③被告準備書面でチャットワークのログの、谷さんに都合のよい部分だけを切り貼りして証拠として提出されたので、証拠保全のときに全部消失したとして保全提出を拒んだのは虚偽ではないか、改めて提出せよ と迫った。この文書提出命令は最終的に、高裁までもつれこんだ上で、命令が下される

 

他には、被告準備書面で都合よく捻じ曲げられた部分を正した上での、詳細なグラニ設立までの彼がgloopsを辞めてからの経緯が、”裁判官にもわかるように”説明されている。彼はもっと多くの矛盾や主張したいことを書き出したが、この時点で弁護士が採用したのはこれだけだった。

 

まあ実際に戦い抜いたからわかることだが、基本的に裁判という”裁判官に信じてもらうゲーム”は、例えば詐欺師が口八丁で裁判官を騙そうとする可能性もあるわけで、基本的には”矛盾を誘って矛盾を崩し、信頼を損なわせる”ゲームなんだろうなと思う。

 

さらに、裁判官も一つの事件だけに関わっているわけではなく、大量の事件を並列してさばいてるわけで、”一度に理解してもらえる量”というのは、はっきりとはわからないがあるように思うし、裁判官も見落としやミスをする。実際にミスがあって、指摘した結果、悪い方向に直されたこともある。

 

そもそも、彼の弁護士もゲーム業界の当時最先端であるソーシャルゲームの開発に関する案件を受けたのはおそらく初めてで、マスタや仕様書、企画書の立ち位置や意味合いも知らなかった。当時のメールを見ると、彼が説明資料を弁護士のために作っていたのが伺える。

 

裁判というのは基本的に交互に書面を出し合うレスバなわけだが、ここでは原告のターンが2回連続で行われている。今度もまた、ゲーム開発とは、ディレクターとは、プロデューサーとは、その他職種の業務とは、といった説明からが内容だ。裁判官が訴訟指揮として求めたのだと思う

 

あらためて彼がどういった作業を担当し、ヴァルハラゲートの何を作ったのか、とマスタを証拠提出した。マスタの命名規則については会社ごとに違うので説明すると、「レイドバトル」「合成」「カードやアビリティなどの全GvGマスタ」「ガチャ確率計算マスタ(一部入倉)」である。

 

多分チャットワークのログにも残ってなかったくらいだと思うが、ガチャマスタについては実際に入倉に、一部かわりに入れといて、と指示をだしてさせた記憶があったので、彼は正直に書いた。裁判官が、そこまで気にしてた(理解してた)とは思えないが、谷さんには意地が伝わっただろうか。

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またここで、一つの証拠を突きつけた。それは、谷さんが「仕様書はほとんど全て谷さんか入倉が作った」と主張したことに対し、「仕様書の制作には癖があり、明確に3人の作ったものは、その癖で見分けられる。明らかに彼が作ったものばかりだ」という証拠だ。

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彼は嘘や矛盾を見つけるのはどうやら得意だったし、どういう風にそれを説明するかも得意だった。この後も、谷さんたちの主張の穴を見つける度に全て弁護士に送って任せていた。弁護士の判断で、彼が見つけていた証拠の一つがここで投入された、というわけだ。

 

手元にあったファイルのプロパティから、入倉が絶対に参加出来なかった頃(gloopsに出社していた頃)から、ヴァルハラゲートの制作が始まっていったことも主張した。これも、相手に都合のいい主張を一旦させてから、本命の証拠をぶつけて打ち破るやり方だろう。

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こういった説明を、全ての仕様書とマスタについて、Flashとは、仕様書とは、マスタとは、プログラムとは、ブラウザゲームとは、といった説明を交えながら主張した。

 

 明確な谷さんの嘘を打ち破れて勝負ありだと思うだろうか?こんなのは、ボクシングで言うジャブにすぎない。このジャブだけで半年以上かかっているわけではあるが、ここからドロドロの法廷闘争が7年も続くのだ。