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ネトゲ戦記 第三部「収益金配分請求訴訟①」

証拠保全も終わり、実際に訴状を出し、裁判が始まることになる。「訴えてやる」みたいな物言いをする人は星の数ほどいるが、実際に訴えたことが有る人は、「訴えてやる」等とは言わない。黙って準備をして、ある日突然宣戦布告をする。

 

この後グラニとは複数の裁判を戦っていくことになるが、この収益金配分訴訟とは、「ヴァルハラゲートという著作物に参加して、その著作権の一部を所持しているが、その収益金の配分がされない。支払って」という裁判だ。グラニが、約束した金すら1円も彼に支払わなかった「舐めたこと」を倍返しだ。

 

訴訟というのは恐ろしく金と時間がかかるし、勝てるかもわからないものではあるし、弁護士は「言質を取られないで言質を取る仕事」だから、勝率を言ってくれない。勝てる見込みがあるとしか言ってくれない。彼は戦うと決めていたので戦ったが、弁護士の反応を思い返すと望み薄だったのだと思う

 

訴状、裁判という戦争の「宣戦布告文」にあたるこれは、「こういう経緯と理由で、こんだけ支払って」という事だけを書く。今回のケースでは、彼はヴァルハラゲートの6割くらいを作ったと思ったので、6割作りましたと書いて戦った。たとえば、合理的に戦うなら、3割くらいに抑えたほうが費用は安い

 

それは、彼が実際にヴァルハラゲートの6割くらいは作っただろうと思っていたからであり、それが彼の納得の行く宣戦布告文だったのでそう書いた。裁判費用は求めた金額に比例して大きくなるので、当然何百万か追加でかかったが後悔はない。嘘をついて戦ったら、きっと彼の心が折れる。

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今回の訴状受け取りサインもあとで裁判資料閲覧にいったときに見たが、谷さんのサインは正常だった。証拠保全のときの、震え倒した字ではない。谷さんも、彼と戦うという事実を飲み込み、腹が据わったということだろうと思った。

 

彼は何件も訴えたが、まだ人生で一度も訴えられたことがないので正確にはわからないが、誰かに訴えられると裁判所を幹事にして日程調整と、「答弁書」という、訴状に対するお返事を書くことになる。といっても、この「答弁書」は形骸化しており、「違います。追って理由は説明します」でいい。

 

実際の訴状に対するお返事は、「被告第一準備書面」がこれにあたる。準備書面とは、裁判で自分たちが言いたいことを準備して紙に書きました、という書面なのだろう。実際の裁判とは、某裁判ゲームのような、異議あり!!というものではない。2ヶ月に1回、準備書面を提出しあうレスバが裁判である。

 

被告第一準備書面には次のような事が、”谷さんが主張したい事実”として書かれていた。彼はグラニ設立にほぼ関係ない。gloopsを勝手に辞めて、谷さんが設立したグラニにあとから参加したいといって合流した。一緒に会社をつくろうなどと約束した事実はない。

 

”彼がヴァルハラゲートの内容について、あれこれと指示を出していたこと”は認めるが、しかしその内容はほとんど採用されていないので、ヴァルハラゲートに反映されていない。ヴァルハラゲートの制作に深く関与していたのは、"副社長となった相川”である

 

”ヴァルハラゲートのマスタや仕様書が、k.miziuharaやJetsという、彼のアカウントで作成されたこと”は認めるが、それは、彼が勝手に制作したファイルを押し付けただけであり、中身は谷さんや入倉が制作したものである

 

”彼がヴァルハラゲートのイラストレーター外注の全てを担当していたこと”は認めるが、全ては谷さんの指示の下に作業をしただけである。その他作業の一切も、彼は才能を発揮するようなことは何もしておらず、全ては谷さんの指導の下である

 

谷さんの主張は概ねこのようなものであり、ヴァルハラゲートの著作権は彼にはない。「職務著作」であると主張してきた。やはりそこで反撃してきたか。想定通りではあった。

 

職務著作とは何か。著作物を作ると著作権が発生する。取り決めがなければ、著作権は関わった人全員に発生する。それでは会社として著作物を作りにくいので、「雇用関係」で著作物を作ったら、「職務」で作ったものであるから、著作権は会社のものである。そんな感じの法律が「職務著作」だ。

 

今読み返していて気づいたが、彼は谷さんの主張では後から参加したのに、どうやって開始時点でのファイル制作を担っていたのだろう?これもツッコメばよかったな。この頃の彼には余裕がなく、これに気づけなかったのか

 

また、彼がgloopsを2ヶ月先に退職し、家にこもって作成した企画書である「purple企画書」は、「次元魔術師」の設定が書いてあるが、ヴァルハラゲートに「次元魔術師」が出てこないので、この企画書はヴァルハラゲートに使われていないのである、という反論もあった。

 

ゲーム業界の人間ならばわかると思うが、企画書というのはあくまでプロットであり、その一部が製品版で変わるなどというのは、日常茶飯事である。だが、これは”裁判官にわからせたほうが勝つ”ゲームであり、”裁判官はゲーム業界で働いたことがない”。谷さんの主張を、裁判官が信じるかもしれない

 

裁判が最もしんどいことは、こうやって”裁判官わからせゲームで勝つため”に、”現実を都合よく捻じ曲げ倒した書類”を、何年にも渡って読み込み、どこが間違ってるか”裁判官にもわかるように”説明していかないといけないことだ。本当に、裁判なんてものは、やらないで済むならやらないほうがいい。

 

ともあれ、想定通りの作戦「職務著作」で、想定よりもやや無茶苦茶に現実を捻じ曲げた被告第一準備書面がでてきた。これから、これを崩していくのが”裁判というゲーム”だ。裁判で出した書面は、「やっぱり違いました」という訂正が出来ないし、明確な矛盾を指摘すれば、裁判官がこちらに傾く。そういうゲームだ。