空白雑記

暇つぶし

ネトゲ戦記 第一部「Cion」

彼がもし1人でリーダーをしていたなら、Cionが参謀でなければ、レベル上限が75になりすべてのHNMが気の狂った取り合いになった頃、タル組は早々に解散していたと思う。あの頃のFF11は、MMORPGは、本当に気が狂っていた。

 

彼がEQのDKPシステムを説明し、タル組ではこういうアイデアを足して運用したい、だから個別にポイント管理できるようにできないかと相談したら、倒したHNMのログと個別の付与ポイントが一覧で確認できる機能が実装された。Cionはそういう人だった。

 

Cionの功績の一つに、HNMの湧きシステムを見抜いたことがある。この頃のFF11は、21-24時間でランダムに湧くHNMを、現地に複数のLSが詰めて、湧いた瞬間に最初に攻撃したLSは戦い、それ以外のLSは何の成果も無くトボトボとデジョンするという、真に気が狂ったゲームだった。

 

CionはマメにHNMのログを入力してくれていた。他のLSに取られた場合も、その倒された時間を残って調べて、次は何日の何時から湧き待ちなのかわかるようにしてくれていた。ある日Cionが気づいた。HNMが倒された時間は、30分前後しかずれない。抽選には法則があるのでは?と

 

仮説があれば立証はすぐだった。HNMは、倒された時間から21時間後から、30分おきにしか湧かない。間の29分は、コントローラーを握って画面を見る必要がない。これは気の狂った湧き待ちを、漫画を読んだりhangameでビリヤードをする時間に変えた。

 

hangameのビリヤードがなぜか流行ったが、Cionが最強だった。ボコボコにされた。何故こんなシステマティックなゲームなのに結果を予測して正確にプレイできないのか?と煽られた。Cionはそういう人だった。

 

Cionが拡充して実装してくれたHNMログ機能は、もう一つの発見を生んだ。キングベヒーモスの、守りの指輪ドロップ率がある日を境に急激に上昇したことに気付き、ログと付き合わせてわかった。参加者全員がピクシーピアスを所持していると、100%守りの指輪が出る。

 

これは、ピクシーピアスが1つしか持てないrareアイテムで、その抽選時に全員が所持していると弾かれ、同じ枠で抽選されていた守りの指輪が出るという仕様バグだったのだと思う。他に気付いていたLSはいたろうか?倒す時にピクシーピアス未所持が抜ければいいので、タル組は全員が守りを持っていた

 

これらはわかりやすい一例でしかなく、Cionは指示しなくても期待以上に動いてくれる秘書だった。「彼の人格はどうかと思うが、彼の才能だけは否定のしようが無い」なんて言うような人だった。仕事をしていてCionが欲しいと思ったことはある。

 

そんなCionが心から喜んではしゃいでるなあと思ったのは、闇王を倒した時と、キャシーでライブカメラにストーカーされた時だろうか。闇王の話はもうしたから、キャシーの話をしよう

 

Cionがいた頃のタル組は最強のHNMLSで、その時最強のHNMを余裕で倒せた。その最たる例が気まぐれキャシーだろう。このHNMは本当に強くて、その鯖最強のHNMLSでさえも無惨に敗退して、誰も倒せない鯖も多数あったという。

 

この頃、FF11の公式HPにあったライブカメラは、タル組をストーカーしていた。毎日タル組のキャシー戦を中継していた。2ch本スレでまたapos軍団のキャシーか、とか言われていたが、彼は正式名称のタル組で呼ばれないことが不満だった。闇の王apos戦法とか名付けたアホのせいだと思う。許さない

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あとから、仕事で関わった人から聞いた話では、タル組があまりに強すぎて、他のLSと比べて異常だったから、戦闘中のログを採取してスクエニチームに研究されてた、と言われた。彼の指揮は見事である、とか。ストーカーされた話はしてないのに向こうからその話をされた。

 

その後彼はゲーム業界に行ったので、スクエニと仕事をする機会があった時に本当か調べて欲しいと頼んでみたが、当時の人はもういなくてわからないという事だった。本当のところはわからない。

 

ただ、ストーカーされていたのは事実だし、ライブカメラの当時の担当キャラではなく、時々destinyというキャラがタル組ライブカメラに写っていた。意外とミーハーだったCionが、今日のキャシーにはdestinyが来てるとはしゃいでたように思う。

 

destinyは広報かなにかのキャラなので、GM権限はありそうだし、それでログを取っていたのか、ただ担当がその日いなくて代役だったのかはわからない。ただ、タル組の強さが異常だったこととして、倒せない鯖もあったこのキャシーを、タル組が11人で倒すところがライブカメラに映った。

 

タル組はこの後新人とかを受け入れて湧き待ちLSになっていくが、この頃はむりに人を増やすより身内でやりたかったので、全員集まった日が18人というところで、人が少ない日もあった。そんなのはお構いなしにライブカメラが先にフェインで待ち構えてるので、やらないといかんなということでやってみたら普通に勝てた。

 

2chは祭りになり、キャシーを倒せてない鯖のスレッドでは「この鯖一位LSの○○はapos軍団が11人で倒すキャシーをフルアラでも倒せないクソ雑魚」という構文が流行った。またしてもapos軍団である。本当に、apos戦法とか名付けたやつは許せない

 

実際は、タル組の戦い方(最初から最後までナイト盾で固定)が最適だと広めたくて、タル組が広報LSに選ばれただけかもしれない。真相はわからない。ただ、タル組以外に真似できるLSはなかった。真似しようとして挑んだNelaは全滅して、塊になって床をなめていた

 

他のHNMLSでは、どこももっぱら盾2枚で交互に挑発する、Apos戦法と呼ばれた彼の使ってない戦法で、後にこれはスイッチ戦法と名前を変えたらしい。SAOのスイッチ戦法がもしこのスイッチ戦法を元ネタにしているのであれば、彼はキリトさんのモデルであるとも言えるし、モデルでないとも言える。これも真相はわからない。

 

だが、そんな"タル組"しか倒せないHNMがいなくなり、全てのHNMが取り合いになってからは、FF11はとてもつまらないものになった。その上、倒せるようになったNelaがスリプルキープだ。最悪だった。それでもCionはマメに記録をつけて、彼と同じくらい廃人だった。

 

やめ時を逃して、ビリヤードをしながら不毛な取り合いをしていたある日、Cionが消えた。ログインしてこなくなったし、連絡もつかない。彼はCionにタル組の資産管理も全て任せていたので、数億ギルの資産も一緒に消えた。数日経って、Cionが消えたのだと実感した。生死すらわからない

 

彼は、全部を任せていた自分のせいだから、足りないが自分の手持ちの資産で精算して引退してもいい。それか、彼の管理でタル組を続けてもいい。選んで欲しいとメンバーに問うた。続けることになった。Cionに任せた責任ならと、彼はそれから嫌いになったゲームを1年ほど続けた

 

1年くらいした頃、不意にCionが戻ってきた。リアルで不幸なことがあり、数日ログインできなかったら、そのままログイン出来なくなった。身の回りが落ち着いたので謝りにきたと言う。

 

彼は肩の荷がおりたので、戻ってきたタル組の資産をその時いたメンバーに均等に配り、さらに自分の資産を初期メンバーに形見分けとして渡せるものは全て渡して引退した。Cionが戻ってきてくれて、きちんと辞め時が出来て良かったと思う。